
バンコクでドイツ料理のファインダイニングという、ちょっと珍しい存在のSühring。2016年にオープンし、2026年にはミシュラン三つ星を獲得しました。レストランを率いるのは、ドイツ出身の双子の兄弟Mathias SühringとThomas Sühring。二人の子ども時代の思い出や家族に伝わるレシピ、そしてこれまで暮らしたり旅したりしてきた世界各地での経験からインスピレーションを得た、モダンなドイツ料理を提供しています。
Sühringがあるのは、バンコクの静かな住宅街に佇む1970年代のヴィラ。誰かの家にディナーに招かれたような、ちょっと特別な気分になります。ヴィラは美しく改装されていますが、もともとの建物が持つ個性もしっかり残っていて、店内はいくつかの部屋に分かれ、それぞれ異なる雰囲気があります。
料理はモダンなドイツ料理のファインダイニングですが、メニューの随所にドイツらしさがはっきりと感じられます。発酵やピクルスなどの伝統的な技法を新しい形で取り入れ、ドイツのクラシックな料理をベースにした一皿も、Sühringらしく再解釈されています。
この日いただいたのはこちら。
Obatzda & Radler: プレッツェルの形をしたスナックに、小さなビアグラスに入ったRadlerが添えられていました。
Brathering & Dill: ニシンのフライを使った、繊細なひと口サイズの一品。
Scallop & Cauliflower: まるでブローチのように仕立てられたホタテ。花が美しくあしらわれていて、とても華やかな一皿でした。
Himmel und Erde: 「大地」を表すジャガイモと、「天」を表すリンゴを組み合わせた一品。
Miyako Salmon with Rhubarb and Turnip: 火入れが完璧なサーモン。ソースの酸味と塩味の組み合わせがどこか日本の梅干しを思わせる味で、サーモンとの相性が抜群でした。
Duck Liver & Smoked Eel: 鴨のレバーと燻製ウナギを繊細に重ねた、エレガントなテリーヌ。聞いただけだと、かなり重たくて少し不思議な組み合わせにも思えますが、実際に食べてみると驚くほどよくまとまっていました。
Rock Fish, Mussel & Verbena: キャビアがのった一皿で、本当においしかった。このあたりで、Sühringの料理がどれだけ安定して高いレベルにあるのかを実感し始めました。印象に残る料理が一皿、二皿あるというのではなく、素晴らしい料理が次から次へと続くのです。
Spätzle with Winter Truffle and Mountain Cheese: こちらは追加料金で選べるオプション。私はSpätzleが大好きなのですが、Sühringではたっぷりのトリュフとチーズを使った贅沢バージョンが楽しめます。これがもう、とんでもなくおいしかった。Sühringを訪れたときにSpätzleが追加メニューにあったら、ぜひ注文してほしいです。
Lamb with Ramson, Spinach and Potato: 私のメインはこちらで、とてもおいしかったです。一方、Steveは追加料金でWagyuにアップグレードしていました。私は普段、テイスティングメニューでWagyuに追加料金を払う価値が必ずしもあるとは思っていません。せっかくなら、シェフがもともとコースの一部として考えた料理を食べたいと思うことのほうが多いからです。でも、Sühringでは話が違いました。
Wagyuがとにかく素晴らしかった。私のラムも本当に、本当においしかったのですが、SteveのWagyuと並べると、存在感が薄れてしまうほど。もう一度選べるなら、迷わずWagyuにします。
デザートはSchwarzwälder Kirschtorte。日本では「黒い森のケーキ」や「ブラックフォレストケーキ」として知られる、ドイツのクラシックなケーキをSühring流に仕立てたものです。Sühringがこうした王道のドイツ料理に真正面から取り組んでいるところが私は好きです。より洗練された一皿に仕上げながらも、元の料理が何なのかは一目瞭然。その難しいバランスをとてもうまく保っていると思います。
最後はOma Christa’s Eierlikör。オリジナルのレシピブックと一緒に提供されました。コースを締めくくるのにぴったりで、Sühringというレストランのコンセプトそのものを感じる一品でした。家族のレシピや子ども時代の思い出は、料理を彩るためのストーリーとして語られているだけではありません。それ自体が食事の体験の一部になっているのです。
このEierlikörを飲んで、以前Nomaで食事をしたときにいただいたエッグノッグのことも思い出しました。盛り付け方が驚くほどよく似ていましたが、それでも食事の最後を締めくくる一杯として楽しめたことに変わりはありません。
本当に素敵な夜でした。Sühringで特に気に入ったのは、何よりもまず「本当においしい料理」が中心にあること。このレベルのレストランになると、ときには少し演出に走りすぎて、珍しい食材や、ただ変わっていること自体が目的のような料理が出てくることもあります。でも、Sühringでは一度もそう感じませんでした。クリエイティブで、途中にはたくさんの驚きもありましたが、それが味を犠牲にすることは決してありませんでした。
これまで経験した中でも、間違いなく最高の食事のひとつです。
Sühring, 10 Soi Yen Akat 3, Chong Nonsi, Yan Nawa, Bangkok 10120, Thailand























